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模擬家事調停

  • 加藤
  • 5月31日
  • 読了時間: 4分

 5月30日、「憲法週間企画出前講義、家事調停ってなあに?」にて、名古屋家庭裁判所の職員様にお越しいただき、出前講義と模擬家事調停を行っていただきました。

 萩野ゼミ…言うまでもなく「刑事法学」を扱うゼミナールのはず……。しかしながら、萩野先生の「知識の縦幅(すなわち専門性)はどれだけでも増やせるけど、その横幅(すなわち他分野)は増やしにくいし、刑事法学以外も知っておいた方が役に立つ。きっと、おそらく……(笑)」という意向もありまして、今回の模擬家事調停に至りました。萩野先生も含めて、今回の模擬家事調停に関わっていただきました皆さんに感謝です。ありがとうございました。

 ところで、「カジチョウテイ」。なんじゃそれ。中世の政治権力ではありません。「調停」というのは、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続のことを言います。その中でも「家庭に関する紛争」について扱うのが「家事調停」という制度です。

 家事調停は原則として、裁判官1名と通常男女1名ずつの調停委員の合計3名で構成される「調停委員会」が、当事者双方から事情や意見を聴いて、双方が納得の上で話し合いにより納得できるように、当事者双方から確認した事情や意見を踏まえ、調停における対立点や整理すべき点について整理し、援助や働きかけを行います。調停委員に選ばれるのは一般市民で、弁護士や不動産鑑定士などの資格保有者や、様々な職業経験を有する者など、知見のある人が多いです。(ちなみに、非常勤の公務員だそうで、現在も40~70歳くらいまでの人を募集しているとのこと。大学の先生もいるそうです。サイトをご覧になっている方で該当する方はぜひ!)

 この他にも、裁判所と連携して当事者に必要な準備を促したり、関係する書類をまとめた記録の作成や保管を担当したりする「裁判所書記官」、裁判官の命令を受けて、心理学、教育学、社会学、精神医学などの専門的な知識や技法を活用して、紛争の当事者や親の紛争の狭間に置かれている子供と面接をするなどして問題の原因や背景を調査、また必要に応じて社会福祉や医療などの関係機関とも連絡を行いながら、当事者や子供にとって最も良いと思われる解決方法を検討し、裁判官に報告する行動科学のプロである「家裁調査官」、精神科、内科などを専門とする医師である「裁判所技官」も活躍しています。

そして、当事者間で合意が成立すると、合意事項を書面にして調停は終了、調停調書に記載された内容は判決と同じ効力を持ちます。(なので、養育費を払わない場合には、最悪の場合、給料の差し押さえなどの強制執行が起こりうる……。ひえええ、恐ろしや。)

 調停不成立の場合は審判手続に移り、裁判所によって審判という形で結論が示されることになります。離婚や離縁の事件において調停不成立となった場合には、調停は終了しますが、家庭裁判所に訴えを提起することにより、訴訟によって解決を求めることができます。

ちなみに、この家事調停、1件あたりの費用が1200円+郵送費(2000円~)だけで済んでしまい、かつ提出書式が裁判所のウェブサイトにも載っています。また、全国の家庭裁判所にて「これって、家事手続を利用できるかしら?」という相談を受け付けてくれる「家事手続案内」もあります。そのため、お手軽に利用でき、多くの当事者は弁護士を使わないと聞きました。

 また、たとえば「僕は名城大に行きたいのに、親が東大に行けって言ってくる……。」というような類いの興味深い家事調停もあると聞きました。

 その他、たくさん学んだことがあるのでまだまだ書きたいですが、他のメンバーとのバランス(?)がありますので、このくらいにしておきます(笑)。

 とはいえやはり、普段は刑事法ばかり扱っており頭が固くなりつつある(いや、専門性に長けていると言うべきか?)萩野ゼミ……家事調停を初めて扱い、非常に勉強になりました。改めて、関わっていただいた皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。




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