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名古屋刑務所見学

  • 加藤
  • 24 時間前
  • 読了時間: 5分

 7月22日(火)、先週の名古屋少年鑑別所に引き続いて、名古屋刑務所へ見学に行ってきました。3年生の私としては、今回が2度目の施設見学で、なおかつ刑務所は初めて……。楽しみ半分、ドキドキ半分の感情を抱きながら、しっかりと学びを得てきました。具体的に何を学んできたかは、後ほどお話ししましょう(笑)。


 ところで、今回見学に行った名古屋刑務所。「名古屋」という地名こそ名乗っていますが、実は名古屋市にあるわけではないんですね。では、どこにあるんでしょう。正解は「みよし市」です。「だったら『みよし刑務所』でいいじゃんか。」いや、そうなんですよ。ただ、きちんと理由があります。元々、名古屋刑務所は昭和区の吹上という場所にありました。今の吹上ホールがある地域ですね。そして、現在の場所に「三好農場」を開設するんです。で、最終的に吹上から移転して現在地に至った、というわけです。謎が解けたでしょうか。では、本題に入りましょう!!!


 名古屋刑務所は、実にナゴヤドーム7個分の広さを誇ります(あ、「バンテリンドーム」と書いた方が広報になるか笑)。広すぎるので、敷地内は自転車でも移動しています。全国だと4番目の大規模刑務所です。え、1番はどこなん?もちろん書きます。東京都の府中刑務所です。ちなみに2番以降も書きますと、大阪刑務所、札幌刑務所と続きます。受刑者が過ごす「部屋」は1467室ありまして、定員に対する収容率は23.4%です。ガラガラですね。犯罪の件数が爆増した約20年前は、収容率が100%を超える、なんてこともしばしば。つまり、定員以上に受刑者がいて、刑務所が人間で溢れかえっている、ということですね。「部屋」の数が足りませんから、通常1人で過ごすはずの「単独室」に2人……。なんてこともありました。現在は犯罪の認知件数が大幅に減少し、それに伴って受刑者の数も減少していますので、そのような過剰収容の心配はありません。

 そして、刑務所といえば、刑務官がわらわらいて、受刑者の監視に当たっている、というイメージがあるでしょう。そんなことはありません。刑務所では刑務官以外もたくさんの方が働いています。部署の役割を見てみましょう。例えば、総務部は事務処理を行いますし、もちろん矯正処遇部は受刑者と相対します。企画調整部は保安や警備・面会そして手紙の発受の他、訟務(訴訟)を担当します。刑務所の中は「お医者さん」もいまして、それが医務部です。名古屋刑務所の場合、医療重点施設とされ、9名の常勤医師(内科3、外科3、整形外科1、精神科1、歯科1)と4名の非常勤医師(内科2、精神科1、眼科1)がいます。さらには、看護師23名、薬剤師2名(所内に薬局もあります)、放射線技師1名(レントゲン室とCT室があります)……その他たくさんの医療従事者の方がおられ、受刑者の健康状態を気にかけています。まるで、大学病院ですよね(さすがに盛ったか笑)。

 とはいえ、こんな意見もあるのではないでしょうか。「なんで犯罪者の医療を充実させるんだ。ほかっておいて、苦しませればいいのに。」それには、こんなふうな返答ができるでしょう。「病気のまま刑務所から出て、治療費がないから強盗をして捕まるなんてことがあったら、刑務所の存在意義って何よ?再犯させるためにあるん?いやいや、改善更生のための刑務所じゃないですか。」と。刑務所の役割とは何か、ということに立ち返って考えると、医療設備がしっかりしていることには納得できますね。

 また、調理室もありまして、受刑者のご飯を調理担当の受刑者が作っています。これは一般には「自営作業」と呼ばれています。調理の他、洗濯も担当の受刑者がおり、これも自営作業に分類することができるでしょう。ご飯は結構美味しそうでしたねぇ。主食は白米7割、麦3割の混合になっており、パンや麺の時もあります。管理栄養士が献立を作っているので、まさに病院食といったところでしょうか。栄養バランスはきちんとしています。アレルギー対応、宗教対応も可能で、豚肉抜きのおかずもありました。ただし、おかわりは禁止です。「僕、お腹いっぱいだからあげるね。」もダメとのことでした。なぜなら、強い受刑者が弱い受刑者からご飯を奪うことが考えられるから、だそうです。理にかなっていますね。調理室は衛生面から、緊急時以外は立入禁止との立札がありました。刑務官も見守りの人以外は入ってはダメということでしょう。確かにそうですね。見学とはいえ、我々がズカズカと入っていって、ご飯に異物混入でもしたら……そりゃいかんでしょう。

 講堂も見せていただきました。小学校の体育館並みの広さでしょうか。昔は演歌歌手が慰問で来ていたとのこと。現在は某有名高校のハンドベル部や吹奏楽部などが演奏に来るそうです。

 最後に収容室も見せていただきました。塗り絵をしていた受刑者がいました。これは拘禁刑が施行との関連で導入された処遇です。創造力をアップさせる効果が期待できますね。また、単独室で布団を被って寝ている受刑者もいました。その時、刑務官の方が「○○さん、今日は作業しないの?」と聞きました。これも拘禁刑の特徴ですよね。懲役刑は、「刑務作業」が刑罰の本質的な内容であったため、刑務作業は義務であって拒むことができませんでした。しかし、拘禁刑は、刑務所に作業または指導を行うことができるとして裁量を与えているので、刑務所がその受刑者には作業をさせる必要がない、と考えたのなら、その者は作業をする必要がありません。もちろん、「この受刑者には作業が、この受刑者には指導が、この受刑者にはどちらも必要だ」と考えたのなら、それぞれの受刑者にはそれに対応した義務が生じます。これが意味することは、刑務所の生活が「楽になった」のではなく、その人にあった改善更生プランを刑務所は考えている、ということですね。怠けだ、と捉えることもできなくはないですが、再犯防止の一過程と捉えることもできそうです。


 ここまで長々とお読みいただきありがとうございました。今後も萩野ゼミでは、刑事施設の見学へ行きます。次はどこになるかは分かりませんが、非常に楽しみなのは変わりありません。今回の刑務所見学を企画していただいた萩野先生はもちろん、名古屋刑務所の刑務官の皆様、その他職員の皆様にも大変お世話になりました。関係者の皆様、ありがとうございました。


追伸

 刑務作業でできた商品にはCAPIC製品(刑務所作業製品)というものがありまして、インターネットなどで売られています。ノートやメモ帳、椅子、カバン、収納棚、なんと麺類まで……様々な商品があります。もしよろしければ、調べてみてくださいね。私はCAPIC製品のノートを買いました。名古屋刑務所製です(笑)。


収容区域を見学した後の質疑応答の様子
収容区域を見学した後の質疑応答の様子

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